4. Figure 解説(Fig 1 – Fig 10)
Fig 1. シナプス活性化により錐体細胞 樹状突起で Na+ ・Ca2+ 上昇が局在する
A: ANG-2 充填した錐体細胞画像、θ-glass 電極で刺激。Na 信号(ANG-2 蛍光増加)・Ca 信号(bis-fura-2 蛍光減少)・EPSP を同時記録。差分擬似カラー画像で局在を可視化。B 左: Na 立ち上がり時間 vs Ca 立ち上がり時間の散布図(青=複数スパイン、赤=単一スパイン)。B 右: Na の半減衰時間ヒストグラム。
A
典型例。Na の立ち上がり 12 ms、Ca のほうが遅い。空間的に約 5 μm に局在。複数スパインを含む ROI と思われる「multiple-spine 応答」を示す。
B 左
多数の試行で Ca の rise time > Na の rise time (点が対角線より上)。これは AMPAR(速い)vs NMDAR(遅い)のキネティクスを反映。比較対象として、ソマの単一活動電位由来の signal は rise 2.85 ms(Na)/ 4.6 ms(Ca)と非常に速いことを示し、シナプス信号の遅さが計測系のせいでないことを担保。
B 右
Na 半減衰時間は 10–60 ms に分布し、ピークは 15 ms 付近。単一スパイン(赤)に絞ると 16 ms 付近に集中。
「複数スパイン応答」と「単一スパイン応答」の連続性を提示し、後者の典型値(rise 約 10 ms / decay t1/2 約 16 ms)が確固たるものであることを示すイントロ的フィギュア。
単一スパインかどうかの判定は「6 μm 以内に局在」「Ca も同じ点に出る」など空間情報からの推測で、シナプス前線維の数を直接 counting しているわけではない。確率的解放(後の Fig 2C)から事後的に裏付けている点に注意。
Fig 2. 単一スパイン応答とシナプス前釈放の確率性
A: 同一スパインに 1 ピクセル ROI を置いた 2 試行。1 試行目(赤)は Na・Ca とも応答あり、2 試行目(青)は EPSP は同程度なのに光学信号は出ない。B: 2 刺激条件で、1 発目に応答する trial と 2 発目に応答する trial。C: 26 試行で 1 発目 vs 2 発目どちらに応答が出たかのヒストグラム(2 発目がやや多い)。
A
EPSP がほぼ同じでも光学信号が all-or-none で出る/出ない → 単一シナプスの量子的応答 と整合(Allen & Stevens 1994, Sabatini et al. 2002 の release probability ~0.3–0.5 を再現)。
B
Na 信号の立ち上がりが シナプス前刺激と 4 ms 以内に rigidly time-locked されている。1 発目 or 2 発目の刺激にきちんと同期して立ち上がるため、人工的なドリフトでなくシナプス由来であることが証明される。
C
2 発目で成功する率がやや高い(58%)→ シナプス前 facilitation を反映(CPP で消えないので NMDA spike ではない)。
「単一スパイン信号」と判定するための量子的・確率的根拠を固める。以降の定量解析(rise 約 10 ms / 5 mM Na 上昇)の前提条件を確立。
「2 発目の方が出やすい」は facilitation で説明できるが、それは presynapticな現象。ポストの NMDAR coincidence detection(spike-timing dependent plasticity の基盤)には触れていない。
Fig 3. 単一スパイン → 樹状突起への Na+ 拡散の可視化
A: スパイン頭部(青)、ネック(赤)、頭部から 2 μm / 5 μm 離れた dendrite(緑・黄)の 4 点で Na・Ca を計測。B: 同じ実験のムービー frame(0, 10, 18, 26, 44 ms)。
A 上
Na 信号は spine head が 最速・最大 、ネック → dendrite と進むにつれ 遅延・低振幅・緩やかな立ち下がり 。これが「Na が拡散で出ていく」直接証拠。
A 中
Ca 信号は spine head にしか出ない(dendrite 2 / 5 μm 点ではフラット)。これは内部対照: Ca が dendrite に漏れていない=光散乱で見えているのではない、ことを保証。よって dendrite の Na 信号は本物。
B
10 ms で Na ピーク(head/neck に局在)、26 ms で Ca ピーク(依然 head のみ)、44 ms で Na が広く dendrite に拡散。
Na と Ca の異なる時空間プロファイルから、Na は拡散して出ていく / Ca はスパイン内に保持される という対比を直接見せる、論文の中核フィギュア。
Ca の「局在性」は実は indicator buffering(bis-fura-2 を 300 μM 入れている)の影響も含む。Ca 自体の挙動かバッファによるアーティファクトかは厳密には区別されていない。著者は後でその点を Fig 7C で fluo-5F と比較して保険をかけている。
Fig 4. 同定された 9 個の単一スパインで定型化された時間経過
A: 単一スパインの空間広がり(Na 1.3±0.2 μm, Ca 1.3±0.4 μm)。B: 9 個のスパインの Na 信号と 8 個の Ca 信号を立ち上がり時点で揃えた重ね描き。C: 平均トレース(Na rise 8.6 ms / t1/2 16.6 ms; Ca rise 19.6 ms)。D: 蛍光プロファイルと、背景補正前後の ΔF/F ヒストグラム。
A
スパインサイズと一致する 1.3 μm(pixel size 0.4 μm が分解能の下限)。実際のスパインはもっと小さいので、点光源 imaging としては妥当。
B
9 個のスパインで時間波形がほぼ重なる → 「スパインの Na 動態には個体差が少ない 」という驚き。形態の多様性にもかかわらずキネティクスが定型化していることを示唆。
C
Na rise 8.6 ms は AMPAR EPSC(数 ms)と整合。t1/2 = 16.6 ms。Ca の rise time 19.6 ms は NMDAR と整合。
D
背景補正で ΔF/F は raw 8.7% → corrected 24.1% に増大。これを Fig 5 のキャリブレーションに通すと 5 mM の [Na+ ]i 上昇となる。
「単一スパインの Na 動態」を定量的に確立する論文のハイライト。後段の RN 推定 / NEURON モデル / 全 Discussion はここの数値に立脚する。
9 個のスパインはサンプルサイズが小さい。さらに「見える」スパインしか選んでいないので、見えにくい小さなスパイン(ネック細い→拡散遅い)はバイアスで除外されている可能性が高い(著者自身も Fig 9B で言及)。
Fig 5. SBFI / ANG-2 の細胞内キャリブレーション
A: gramicidin D + monensin + ouabain で内外 Na 平衡を作り、外液 Na を段階的に変えながら細胞内蛍光を測定。B: SBFI と ANG-2 の濃度応答曲線。fura-2 型単波長式に fit。
A
Na イオンフォア(gramicidin, monensin)で膜透過化、Na/K ポンプを ouabain でブロックして [Na+ ]i = [Na+ ]o とする標準的手法(Rose et al., 1999 の改変)。
B 上
ANG-2: Kd = 84.2±8.3 mM, (Fmax −Fmin )/Fmin = 3.7。低親和性 → 生理範囲(0–20 mM)でほぼ線形応答。
B 下
SBFI: Kd = 24.5±6.8 mM。Rose et al. 1999 の 26 mM とよく一致 → キャリブレーション手順の信頼性担保。
後の「単一 EPSP → 5 mM の Na 上昇」という生理学的に重要な数字を支える数学的基盤。低親和性指示薬を選んだことで Na がバッファされず、kinetics が歪まないという理論的優位性が裏付けられる。
細胞内キャリブレーションは外液変化=内液変化の前提が完璧であることが必要。gramicidin の透過率や、領域による色素濃度差は実際にはある。誤差を 6.8 / 8.3 mM と SD で示しているのは誠実。
Fig 6. CNQX(AMPAR ブロッカー)で Na・Ca 信号と EPSP が消失
A: 同一スパイン領域で 5 μM CNQX 投与前後 + washout。Na ほぼ完全に消失(p<0.0001)、Ca も大部分消失(p<0.001)、EPSP も消失。B: 10 セルの集計棒グラフ。
A
CNQX で Na 完全消失、Ca も 70% 程度減少。後者は「AMPAR ブロック → EPSP 消失 → Mg block が外れず NMDAR も開かない」という二段論法で説明。
B
集計でも同様。washout が部分的にしかできていない(光損傷の制約; Materials and Methods 参照)のが弱点として記載されている。
「Na 流入の主経路 = AMPAR」を 直接証明する第一の薬理学的証拠 。次の Fig 7 と組み合わせて、論文タイトルの根拠を構築する。
CNQX で Ca も消えるという結果は、Ca が NMDAR 経由(depolarization 依存)であることと整合するが、「AMPAR 自体の Ca 透過性」(GluA2 非含有 Ca-permeable AMPAR) の寄与は本研究では明示的に否定されていない。CA1 錐体細胞では GluA2 含有が大多数なので問題ないが、他細胞種に拡張する際は注意。
Fig 7. CPP(NMDAR ブロッカー)は Ca 信号をほぼ消失させるが Na 信号にはほとんど影響しない
A: 10 μM CPP で Ca 約 90% 減(p=0.0002)、Na はわずか 20% 減(p=0.007)、EPSP は不変。B: 5 セルの集計。C: bis-fura-2 と fluo-5F で同時測定(Bloodgood et al., 2009 との比較)し、両 indicator で同じ fractional change → 飽和アーティファクトでないことを担保。
A
NMDAR を選択的にブロックすると Ca の 90% が消える のに Na はほぼ無傷 。これは「Na と Ca の主経路が異なる」ことの最も直接的な薬理学的証明。
B
n=5 で再現性確認。両群とも統計的に有意。
C
飽和しやすい bis-fura-2 と低親和性 fluo-5F が同じ fractional 減少を示すので、「Ca 90% 減」は indicator 飽和のアーティファクトではない。これは methods 上の重要なコントロール。
Fig 6 と対をなして「シナプス活性化での Na = AMPAR、Ca = NMDAR」という 2 経路分離仮説を確立。これが本論文の central claim。
「Na の 20% 減」は無視されがちだが、これは NMDAR 経由の小さな Na 流入を示唆しており、後の Fig 9 で NEURON モデルに NMDA 成分を組み込む根拠となる。完全に「NMDAR は Na を運ばない」と言っているわけではない点に注意。
Fig 8. VGSC は EPSP に寄与しない(3 つの独立な実験)
A: 10 回 bAP 列で oblique dendrite の Na 信号を測定。B: QX-314 群と control 群でシナプス由来 Na 信号は同等。C: 同じ細胞でスパイク有 vs スパイク無 trial を比較。
A
10 bAP で dendrite Na は ΔF/F ≈ 5.6%(背景補正後)→ 単発 bAP では 0.13 mM 程度。シナプス由来の 24% ΔF/F(5 mM Na)に比べ 3% 未満 。dendrite 上に「hot spot」も見当たらず、AIS にだけスパイク由来の hot spot が出る → Kole et al. 2008, Fleidervish et al. 2010 と整合。
B
1 mM QX-314 を pipette に入れて 30 min 拡散 → ソマからの bAP 誘発不可になっても、シナプス Na 信号は変わらず(control 10.1% vs QX-314 8.5% ΔF/F, p=0.93)。スパインに VGSC があるなら、QX-314 で減るはずだが減らない → スパインに機能的 VGSC は事実上ない。
C
bAP を伴う trial(threshold 直上)vs 伴わない trial(直下)で、Na 信号は同等(p=0.35)だが Ca は bAP 群で大きい(p=0.004)。bAP は Mg block を素早く外して Na を呼び込むという仮説(Rose & Konnerth 2001)を否定し、同時に Ca のみが coincidence を encode することを明示。
「VGSC の関与は無視できる」という結論を 3 通りの独立実験で固める。同時に スパインの 2 種類の独立シグナル (Na = 電気的伝達, Ca = 可塑性 trigger)という重要な機能的二重性を導く。
B の実験は「比較する 2 群が同じ条件かどうか」が paired でないため弱い(著者も明記)。Araya et al. 2007 の TTX で uncaging EPSP が減るという結果と矛盾するが、これは uncaging が直接膜を強く脱分極させるため、TTX 感受性持続性 Na 電流(INaP )が活性化されやすい可能性があり、シナプス入力との生理的差異が考えられる。
Fig 9. NEURON による単純拡散モデルが実験を再現する
A: spine head(d=0.6, L=0.85 μm), neck(d=0.2, L=0.6 μm), dendrite[0/1](d=0.5, L=100 μm)の 4 区画モデル。AMPA + NMDA コンダクタンスのみで Na 流入を生成し、ポンプ・他チャネルなしで拡散だけで除去。t1/2 = 15 ms と実験値(16.6±4.5 ms)が一致。B: 4 つのパラメータ(neck 拡散係数, neck 径, neck 長, head 容積)を変えたときの t1/2 。
A 模式図
シンプルな 4 区画。AMPAR キネティクス gAMPA (t) = gA [exp(−t/2 ms) − exp(−t/0.5 ms)]、NMDAR は Mg block 込み gNMDA (t) = gN ·[1/(1+k/[Mg])]·exp(−t/71 ms)·[1−exp(−t/13.2 ms)]、k = 1.07 exp(0.057 V)。膜ポンプも他のコンダクタンスも入れていない。
A トレース
spine head(赤)は急峻な ピーク 10 mM → t1/2 15 ms で減衰。neck(緑)と dendrite(青)は遅延・低振幅・緩慢な減衰。NMDA を切る(破線)と slow component が縮み t1/2 も 2.4 ms 速くなる。
B
neck 径 0.1 μm(観察値の下限)や拡散係数を小さくしたケースのみ t1/2 が大きく外れる。他のパラメータでは観察値の範囲内に収まる。=「ネック特性が標準的なら 16 ms は自然」 。
膜ポンプ・他のチャネル一切なしで 受動拡散だけ で実験値が再現される、というシンプルかつ強力な結論。スパインネック抵抗 RN ≈ 92 MΩ(FRAP 由来の値域 4–150 MΩ と整合)を導く根拠。
モデルは electroneutrality を仮定し、electrodiffusion(電気的駆動力と濃度勾配のカップリング: Qian & Sejnowski 1989, Holcman & Yuste 2015)を無視している。著者も Discussion で明記。短時間スケール(数 ms 〜 数十 ms)では妥当だが、ネック直径が極端に細い(<0.1 μm)スパインや、頻回刺激下では電気拡散効果が無視できなくなる可能性。
Fig 10. NMDAR の regenerative 活性化による長く大きな Na 信号
A: 2 連続刺激で長持続する plateau 様 EPSP と長い Na 信号 → CPP で消失(NMDA spike)。B: bAP 同時発生時に大きな Na・Ca 信号(bis-fura-2 が saturation)。C: 0 mM Mg2+ 条件で大きな長い Na 信号 → CNQX で弱く減るのみ(p=0.04)→ NMDAR 経由の Na 流入を直接見せる。
A
plateau 電位 = NMDA spike。CPP で plateau も Na の slow tail も両方消える → 両者の同一性。
B
bAP がきっかけで regenerative NMDA 活性化が起きると、Na・Ca とも大きくなる。Ca は飽和。「coincidence detector」としての NMDAR の典型挙動。
C
Mg2+ を除去して NMDAR を恒常的に開けると、CNQX 投与下でも長い Na 信号が残る(CNQX で 約 50% 減のみ, p=0.04)→ NMDAR の Na 透過性を生理条件で初めて直接 visualize 。これは Rose & Konnerth 2001 の主張(生理条件で NMDAR が主な Na 源)と表面上は近いが、生理的 Mg では subthreshold で NMDAR がほぼ閉じているため寄与は小さい、という結論に至る。
「通常の subthreshold 入力では AMPAR、強い入力・regenerative 活性化では NMDAR」という 2 モード仮説 を提示。スパインは線形伝達と非線形可塑性 trigger の両方を実装する装置である、と結論づける論文の終着点。
C の「数 μm に広がる」信号は、もはや単一スパインではなく複数のスパインや dendrite 自体への extrasynaptic NMDAR の寄与も含む可能性が大きい。NMDA spike 本体の局在性については別途検討が必要。
5. 本文の流れ(Introduction → Methods → Results → Discussion)
Introduction: なぜ Na imaging か
Dendritic spine は synaptic integration と plasticity の中心装置だが、直接電気記録は近年 Jayant et al. (2017) のナノピペットがようやく可能にしたばかりで、ほぼ全ての知見は VSD imaging または Ca imaging から得られている。しかし Ca はチャネル選択性(NMDAR と VGCC のみ)に限られ、AMPAR や VGSC の機能を見ることができない。さらに Ca は indicator 自身に強く buffer される ため、time course が歪む。
そこで著者らは Na imaging に着目する。Na は (1) 全主要チャネル(AMPAR, NMDAR, VGSC)の主要 charge carrier、(2) 内因性 buffer ほぼなし、(3) 低親和性指示薬(SBFI, ANG-2; Kd 数十 mM)が利用可能で蛍光変化が線形、というメリットがある。先行研究の Rose & Konnerth (2001) は 2P imaging で複数スパインから測定したが、時間分解能と感度が不足していた。著者らは Miyazaki & Ross (2015) で開発した 励起波長 fast-switching 法 (385/520 nm を交互に点灯)と高速低ノイズ CCD を組合せ、単一スパインで Na・Ca を同時計測する系を確立。
Methods のキーポイント
標本 : 2–4 週齢 SD ラット海馬 300 μm slice、CA1 錐体細胞。室温 24°C。Mg2+ は実験により 1 または 2 mM(1 mM は in vivo 値に近い: Ding et al., 2016)。
記録 : ソマ全細胞パッチ。pipette に SBFI + Ca 指示薬 (OGB-1 or fluo-5F)、または ANG-2 (200–400 μM) + bis-fura-2/fura-FF (300 μM) を入れて 30 分拡散。
刺激 : θ-glass 電極を 2 次 dendrite から ~20 μm に置き、200 μs、10 ms 間隔の 2 発刺激(成功率 up のため)。閾値下に電流を調整、必要なら 10 mV hyperpolarize。
撮像 : NeuroCCD-SMQ、80×80 px、500 Hz(つまり各 channel 250 Hz、4 ms/frame)。Olympus 60× / NA 1.1。
キャリブレーション : gramicidin D + monensin + ouabain で内外平衡。fura-2 型単波長式 [Na+ ]i = Kd (Fmax −F)/(F−Fmin ) を fit。
解析 : 自作 MATLAB プログラム SCANDATA。LED 強度ドリフトを画像外縁で補正、bleach 補正、movement registration。光損傷を避けるため 1 細胞あたり 5–10 trials が上限。
Results の論理展開
Fig 1–2 : シナプス活性化で局在 Na・Ca 信号を検出。Na の rise time(12 ms)が Ca(17.6 ms)より速い。release probability の確率性を確認し、単一スパイン応答を抽出する手順を確立。
Fig 3–4 : 9 個の同定スパインで、Na は head にピーク(rise 8.6 ms / t1/2 16.6 ms)、neck・dendrite に拡散して広がる。Ca は head に留まる。これが central observation。
Fig 5 : SBFI Kd = 24.5 mM, ANG-2 Kd = 84.2 mM のキャリブレーションで、24% ΔF/F → 5 mM の Na 上昇に換算(静止 [Na+ ]i を倍増)。
Fig 6–7 : CNQX で Na ほぼ完全消失(AMPAR が主経路)。CPP で Ca 90% 消失するが Na は 20% 減のみ(NMDAR は Na 源として弱い)。
Fig 8 : bAP の dendrite Na 信号は微小、QX-314 でも synaptic Na 信号は不変、bAP 有無で Na 信号は同等 → VGSC は EPSP に寄与しない。
Fig 9 : NEURON で AMPA + NMDA + 拡散のみのモデルを作ると、t1/2 15 ms を再現。RN = 92 MΩ を推定。
Fig 10 : 強い刺激や 0 Mg では NMDA-mediated plateau / spike が出て、長い大きな Na 信号を生む。これが non-linear モードを提供する。
Discussion の主張
シナプス Na 主経路 = AMPAR 。Rose & Konnerth 2001 の「NMDAR 経由」説を否定。
VGSC の寄与は <3% 。Lorincz & Nusser 2010 の免疫学的所見(スパインに Nav なし)と整合。Araya et al. 2007 の「TTX で uncaging EPSP が減る」結果と矛盾するが、glutamate uncaging vs synaptic input という生理的差異で説明可能。
EPSP は線形応答 。Harnett et al. 2012 の「スパインが non-linear に増幅」は subthreshold 領域では成立しないかもしれない。
除去 = 拡散 。AIS / Ranvier 絞輪と同様、膜ポンプではなく軸方向拡散が支配(Fleidervish et al., 2010)。
低 neck 抵抗 。FRAP 由来推定(Svoboda et al., 1996; Takasaki & Sabatini 2014)と整合し、Harnett et al. 2012 や Jayant et al. 2017 の高抵抗推定と対立。
強い刺激では NMDA spike 。Antic et al. 2010 の dendritic NMDA spike の生理。
6. 主要な数式・モデルとその直感
6.1 fura-2 型単波長キャリブレーション
SBFI / ANG-2 の蛍光と [Na+ ]i の関係(Grynkiewicz et al., 1985 の単波長式; Fig 5B にも表示):
\[ [\mathrm{Na^+}]_i \;=\; K_d \, \frac{F_{\max} - F}{F - F_{\min}} \]
直感 : F が Fmin (イオンなし)に近いと右辺発散 → 低 Na 域では小さな F 変化が大きな濃度変化に対応。F が Fmax (飽和)に近いと右辺ゼロ → 高 Na 域で saturate。
神経科学的意味 : 低親和性指示薬(Kd = 24 / 84 mM)は生理範囲([Na+ ]i = 5–15 mM)で線形に近い。これが「Na imaging では time course が歪まない」根拠。
6.2 1D 拡散による除去:Fick の第二法則
スパイン頭部からネック方向への 1D 拡散:
\[ \frac{\partial [\mathrm{Na^+}]_i}{\partial t} \;=\; D_{\mathrm{Na}} \, \frac{\partial^2 [\mathrm{Na^+}]_i}{\partial x^2} \]
直感 : 高濃度の場所から低濃度へ、勾配の二階微分(=曲率)に比例して平滑化される。頭部の高濃度スパイクは時間と共に「ネック・dendrite に流れ出る」。
DNa = 0.6 μm2 /ms (Kushmerick & Podolsky 1969)。ネック長 0.6 μm → 単純な拡散時間スケール τ ≈ L2 /(π2 D) ≈ 0.06 ms(拡散だけ)。これより遅い 16 ms の半減衰は、頭部容積から流出する有効容積効果と dendrite の sink 性能で決まる。
神経科学的意味 : 受動拡散だけで現象を説明できる = ネックは抵抗源として小さく、ATP 駆動ポンプは不要。
6.3 ネック抵抗 RN の Svoboda 公式
FRAP 由来の関係式(Svoboda et al., 1996):
\[ R_N \;=\; \frac{\tau \, \rho_i \, D_{\mathrm{Na}}}{V_n} \]
τ = 23 ms(観測 t1/2 16 ms から指数近似で換算)
ρi = 180 Ω·cm
DNa = 6.0 × 10−6 cm2 /s
Vn = 0.1–0.25 μm3
計算結果: RN = 92–250 MΩ 。先行 FRAP 推定(Svoboda 4–150 MΩ)の上限近く。
直感 : 「拡散の τ が長い」⇔「ネックが細く長い」⇔「電気抵抗が高い」。両者は同じ幾何因子に支配される。
神経科学的意味 : RN が低い (~100 MΩ) ということは、スパイン頭部と dendrite が 電気的にほぼ繋がっている 。EPSP は dendrite 側にほぼ減衰なしで伝わる = スパインは「電気的に隔離されたコンパートメント」ではない。一方、Harnett et al. 2012 や Jayant et al. 2017 の GΩ オーダー推定とは桁違いの食い違い。
6.4 NEURON モデルのコンダクタンス
AMPAR(速い "alpha 関数" 型 → 実際は差分指数):
\[ g_{\mathrm{AMPA}}(t) \;=\; g_A \left[ e^{-t/\tau_1} - e^{-t/\tau_2} \right], \quad \tau_1 = 2\ \mathrm{ms},\ \tau_2 = 0.5\ \mathrm{ms} \]
NMDAR(Mg ブロック込み、Woodhull 型):
\[ g_{\mathrm{NMDA}}(t) \;=\; g_N \cdot \frac{1}{1 + k/[\mathrm{Mg}]} \cdot e^{-t/\tau_3}\,\left[1 - e^{-t/\tau_4}\right], \quad k = 1.07 \, e^{0.057\,V} \]
τ3 = 71 ms(NMDA の長い decay)、τ4 = 13.2 ms(NMDA の遅い rise)、[Mg] = 2 mM。
直感 : AMPAR は数 ms で開閉する「電気的キャリア」、NMDAR は数十 ms かけて開く「coincidence detector」。両者の時間スケールがオーダー違いなので、Na の急速立ち上がり (~8.6 ms) は AMPAR 由来であることを数式が示す。
k(V) = 1.07 exp(0.057 V) : 脱分極(V ↑)で Mg block が外れる電位依存性(McCormick et al., 1993)。
dendrite (d=0.5 μm, L=100 μm)
neck
d=0.2 μm, L=0.6 μm
spine head
d=0.6, L=0.85 μm
AMPA → Na⁺
NMDA → Na⁺,Ca²⁺
拡散
Fig 9A: NEURON 4 区画モデルの模式図
t (ms)
g
0
25
50
75
100
AMPAR (τ ≈ 2 / 0.5 ms)
NMDAR (τ_rise=13.2, τ_decay=71 ms)
AMPAR は数ms で開閉、NMDAR は数十ms 続く